誰も見ていないかもしれないけど、粛々と上げていく没SS第二弾。
(カウンターを付けてないのでマジで人が来ているのかわからん)
今回は2巻の没SSです。
横書きで読みやすいように行を空けてるよ。













 ディオスと神獣たちは、現在バハル・シエロの端にある公園にやって来ていた。
 柔らかな芝生が生い茂り、大きな木も点在していて、それなりの広さがある公園だ。
 しかし多くの人で賑わっている浜辺とは違い、公園内は閑散としている。

「おー。人っ子一人いないね」
「やはり皆さん、海で遊んでいらっしゃるのでしょうねえ」

 神獣形態でディオスの体に乗ったまま、神獣たちは公園内をキョロキョロと見渡した。

「でも、これくらい静かな方が俺は落ち着くよ」

 そう言うとディオスは、すっかり日の光で色あせたベンチに腰を下ろした。
 気分転換に散歩に繰り出したものの、当然のようにホテル内はどこも人が多く――。
 半ばげっそりとしながら街の外れまでやって来たら、この公園を見つけたというわけだ。

「にゃー」
「……ん?」

 不意に聞こえてきた、細くて可愛らしい声。
 皆は一斉にレイナへ振り返った。

「わ、私じゃないわよ!?」
「でも今の声、絶対猫だったよねー、的な?」
「だから私は猫じゃないってば!? ……それよりもこの声、私たちを呼んでいるみたいよ」
「猫の言葉がわかるなんて、やっぱりレイナは――なんでもない」

 ディオスが言葉を途切れさせたのは、レイナが凄い形相で睨んできたからだ。
 レイナはディオスの肩から飛び下りると、人間形態へと変身する。そして他の神獣たちも、彼女に続いて人間形態になった。
 その間も「にゃー」という声は、絶えることなく続いていた。
 しばらくの間、皆は周囲にくまなく視線を這わせていたが――。

「お兄ちゃん……いた……。あそこ……」

 マリンが指さしたのは、近くに生えた木の上だった。
 見上げた先には、白い猫がいた。
 枝の先から、青い目でディオスたちを見下ろしながら鳴いている。

「ふむふむ……」
「レイにゃん、何て?」
「あの子、カラスにいじめられている内に、この木に登っちゃったみたい。カラスは飽きてもうどこかに行ったらしいけど、高いから下りられなくなったって。で、私たちに助けを求めていたと」
「あらあら。それでしたら私が下ろしてさしあげます」

 言うや否や、エメロードは背から蔦を出す。そして猫に向けてシュルシュルと蔦を伸ばした。
 エメロードの蔦は白い猫の体に絡み付き、そしてすぐに彼女の体へと巻き戻った。

「……良かった……」

 皆が安堵する中、エメロードは白い猫を解放する。
 その瞬間、白い猫はレイナの体に飛びついたのだった。

「うにゃっ!?」

 白い猫はレイナの頬に、強く顔をすり寄せる。

「レイナに声を聞いてもらえたことが、よっぽど嬉しかったんだろうな」
「あらあら、助けたのは私ですのに。ちょっと嫉妬しちゃいます」
「まぁまぁエメ姉」
「でもレイナ……。そうやって白い猫を抱いていると……その子……レイナの子供みたいに見える……」
「なっ、何を言ってんのよマリン!?」
「あー、確かに。レイにゃんも白いもんねぇ」
「だから私は猫じゃないって――にゃああッ!?」

 レイナが突然大声を上げたのは、白い猫がレイナの首筋をペロペロと舐め始めたからだ。

「あっ、あの、嬉しいのはもうわかったから、その、ちょっとやめ――ひゃぁん!」

 無人の公園に響き渡るレイナの艶っぽい声。
 それでも猫を払いのけるわけにもいかず、レイナは白い猫にされるがままになっていた。

「……微笑ましい光景から……一転したような……」

 マリンが冷静に呟いた時、今度は白い猫はレイナの胸元に顔をスリスリとし始めた。

「や、そこはダメっ。わ、私はお母さんじゃないっ! くすぐったいってば!」

 どういう顔でこの光景を見れば良いのかわからず、ディオスは首筋を掻きながら困惑している。
 その隣で、エメロードは蔦で自分の体を縛り始めてしまった。

「これは……。今、私の中で新しい扉が開いたのがわかりました。動物責めがこんなに興奮するものだなんて……うふふ……ふふ……ふふっ……」
「エメ姉のレベルがどんどん上がっていく……」

 ルヴィは額から脂汗を垂らしながら、若干彼女から距離を取るのだった。
 ようやく白い猫がレイナから離れると、彼女は力が抜けたようにペタンと地面に座り込んでしまった。
 顔を赤くしながら乱れた呼吸を繰り返す姿は、知らない人が見たら猫とじゃれ合っていたとは全く思わないだろう。
 白い猫はレイナの周りを一周すると「にゃー」とひと声鳴く。

「……うん。今度はカラスにいじめられないに気をつけなさいよ」

 もう一度「にゃー」と鳴いてから、白い猫はあっという間に公園の端の方まで行き、姿を消した。

「行ってしまったな」
「……迷子に……ならないかな……」
「あの子、この近辺で暮らしている野良猫みたいだから、そこは大丈夫なんじゃない?」
「そんなことまでわかるなんて、さすがレイにゃんだねー」
「…………猫じゃない」

 曇り空の如く、どんよりとした目で抗議するレイナ。さすがに疲れたらしい。

「うふふ……。今のでご主人様を攻める新しい方法を思い付きました。次はレイナさんに神獣形態のままでいてもらって……うふふ……」
「え、ええと……。もう少し公園内を散策してみようか」

 じゅるりと涎を啜るエメロードにそこはかとなく危機感を覚えたディオスは、強引に話題を切り上げるのだった。












ディオスが神獣たちと触れ合ってないと言われたので没。
確かにほのぼのしてますが個人的にはこういう系のが好きなんだ……。
5巻にこのSSの要素をちょっとだけ散りばめてます。

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2018.11.26