小説の事とか日常の事とか。不定期更新。
画像の無断転載は禁止。
PC版とスマートフォン版ではデザインが違います。

リンクはフリーです。ご自由にどうぞ。

バナーを使用する場合はこちらを。


『神獣<わたし>たちと一緒なら世界最強イケちゃいますよ?』
富士見ファンタジア文庫より1~4巻発売中。
5巻11月20日発売。



ネット上にUPしている小説一覧はこちら

2037.04.01 
「5」の改変バージョンです。保健室での話。
決定稿とあまり変わらないです。











 校舎の端にある保健室の中。
 現在その中では、白衣を着たエメロードがディオスににじり寄っている最中だった。

「さあご主人様。服を脱いでくださいませ!」
「脱ぐ必要はないだろ!?」
「そんな、いけません。傷の手当てをするというのに。体中に血が付いてしまいます」
「指先なのに? どんなアクロバティックな手当てをするつもりなんだよ!」
「……私も……脱いだ方が……いいと思う……」
「マリンまで乗っかるな!?」

 相変わらず無茶な要望をしてくる二人に、ディオスは額を押さえずにはいられない。
 なぜ、こんな状況になっているのか。
 発端は、ディオスが指の先を切ってしまったことにある。
 とはいっても、紙でスッと切ってしまった程度だ。
 しかし、それを見ていた神獣たちが血相を変えた。
 これまでにディオスに守られてきた神獣たちであるが、やはり主人である神獣使い《サマナー》の血を見て平気でいられなかったのだ。
 大したことはないと渋るディオスを引きずるような形で、保健室まで来たという経緯であった。
 ちなみに授業中だったこともあり、レイナとルヴィは教室に残っている。ディオスがいない間、授業内容を覚えておいてもらうためである。
 あの二人なら、ちゃんと授業を聞いてくれるだろう。
 その人選は間違いでなかったと思う。かといって、付き添い二人の人選が正しかったという自信はない。というか、本当は全員置いて来たかった。無理やり付いてきたのだ。
 じりじりと後退していたディオスであったが、ついに壁際まで追い詰められてしまった。
 しかし、ディオスを助けてくれる人間はいない。タイミング悪く、肝心の保健医が留守だったのだ。

『現在おやつタイムです。御用の方は職員室まで☆』という緩いメモが机に残されているのみであった。

 ちなみにエメロードが白衣を着ているのは、椅子にかけられていたのを勝手に拝借しているだけである。

「それ、勝手に着たらダメだろ。元に戻しておいた方がいいって」
「うふふ。これくらいの好奇心ならきっと許してくださいますって。メモを見る限り、心の広い先生みたいですし。それよりも、どうですかご主人様? 私の白衣姿、なかなか似合っていませんか?」

 胸元を強調しながら、エメロードは右を向き左を向き、様々なポーズを取る。

「……とても……似合ってると思う……。これで……眼鏡があれば……さらに完璧……」
「なるほど。貴重なご意見ありがとうございますマリンさん。今後の参考にさせていただきます」
「何の参考にするんだよ……」
「……ところで……そろそろ……治療した方が……いいと思う……」
「ああ、そうだな。早く教室に戻ろう――って、何をするんだマリンーッ!?」

 ディオスが絶叫したのは、マリンが怪我をした指をかぷっと口に咥えたからだった。

 いつも彼女の体は冷たいのに、口の中は温かい。
 指先にマリンの体温を感じた瞬間、彼女は指を優しく吸い始めた。

「あらあらあらあら!」

 その光景に、エメロードは目をキラッキラさせている。
 さすがに止めてくれるだろうと一瞬だけ期待したのだが、儚い希望だったことを知る。
 そうだ。エメロードはこういう性格だった。

「……んっ……血の味……」
「い、いや、無理するなって」
「……血も水分だから……大丈夫……」

 何てことだ。マリンが吸血クラゲになってしまった。
 マリンは吸うのはやめたが、まだディオスの指をペロペロとしている。

「あっ――もう我慢できません……! 私もご主人様をペロペロいたします! できれば全身を! さああちらのベッドへ!」
「全身はやめ――ぎゃあッ!?」

 便利能力、エメロードの蔦発動。
 たちまちディオスはベッドの上に強制移動。
 興奮したエメロードは、白衣姿のままディオスの上に乗ってくる。ついでにマリンも乗ってくる。

「さあご主人様。傷ついたお体を、私たちが存分に舌で癒やしてさしあげます」
「もう大丈夫だから! マリンのおかげで血は止まったみたいだし!」
「……今まで体に付いた傷も……この際ついでに……」
「そういうサービス精神は本当にいらないから!?」
「ディー君たち……何してんの……」

 いつの間に入ってきたのか。振り返るとファルルが立っていた。
 箱を抱えていることから察するに、何かの手伝いでここに来たのだろうが――。

「いや、あの、授業中にちょっと怪我を――」

 苦し紛れに指を見せるディオスだったが、完全に逆効果だった。

「ベッドが必要なほどの怪我には見えないんだけど?」

 ファルルの顔は笑っているが、こめかみがピクピクと動いている。

「……お兄ちゃん……」
「ご主人様……」

 少し眉を下げながら、ディオスの顔を見上げてくる二人。
 ディオスの心は二人と一つになった。誠に遺憾であるが。

「ああ、そうだな……。ここは……退散ッ!」

 そして三人は猛ダッシュで保健室から逃げ出すのだった。












というわけで、今回で没SSの放出は終了です。
少しでも楽しんでいただけたなら出した甲斐があります。
ここまで長い話は無理でも、今後も小ネタが浮かんだら500文字くらいのSSとしてこっそり掲載しようかなと考えております。
本編で出せなかった設定もありますので。
あまり期待はせず、のんびりとお待ちくだされば幸いです。

2018.12.15 
え、まだあるの? と思った方。
まだあります。
3巻のSSは没量産したのです……。
特典SSでこんなに没になった作家さん、他にいるのだろうか……(遠い目)












「いたっ!」

 小さな悲鳴を上げたエメロードに、ディオスと神獣たちは反射的に振り返っていた。
 放課後の教室で、テネルから出された課題のプリントの整理をしていたディオス。
 エメロードもそれを手伝っていた最中の出来事であった。

「どうした? 大丈夫か?」
「すみませんご主人様。ちょっと紙で指先を切ってしまったようです」

 そう説明するエメロードの指先には、うっすらと赤い線が浮かんでいた。

「うわー、地味に痛そう」
「傷は大したことないですが、指先はすぐに血が止まらないのですよね……」

 エメロードは自分の蔦で指を縛って止血しているが、傷口はなかなかに痛々しい。

「無理しないで、保健室に行ってくれば?」
「……うん……。ここは……私たちに任せて……」

 神獣たちの申し出に、ディオスも首を縦に振る。

「そうだな。サッと行ってくるよ」
「お手数をおかけしてすみませんご主人様……」
 珍しく眉を下げるエメロードを引き連れて、ディオスは教室を後にするのだった。




「失礼します」

 初めて訪れる場所とあって、ディオスはおそるおそる保健室の扉を開ける。
 だが、中からは何の返答もない。

「あれ? 誰もいないのかな」
「ご主人様。机の上に何やら伝言のようなものが」

 そちらに視線をやると、彼女の言う通り、コルクボードにメモが刺さっていた。それには『現在おやつタイムです。御用の方は職員室まで来てね☆』と書かれている。
 何というか、緩い。
 ディオスのクラスの教師テネルも相当に緩い性格だが、ここの保険医も同じような種類なのだなと、即座に想像できてしまった。

「仕方がないな……。職員室まで行ってくるよ」
「いえ、先生のおやつタイムを邪魔するほどではないかと。緊急を要する怪我ではないですし。ちょうどそこの棚に包帯があるので、お借りすることにします」
「まぁ、後で報告すればいいか……」

 首筋を掻くディオスの前で、エメロードはテキパキと自分の指に包帯を巻いていく。
 あっという間に手当て終了である。

「あら、見てくださいご主人様。ベッドがありますよ」
「うん、そうだな。これは病人のためのベッドだな」
「ところで私、血を流しすぎてフラフラしてきました。ご主人様と一緒に寝たら治るかと」
「いや、血が出たのって指先だけだろ!? 露骨すぎるわ!」
「ええー。せっかく『誰もいない保健室』という美味しいシチュエーションなのですし、ここは存分に堪能しましょうよ。制服姿の私を激しく乱しても良いのですよ?」
「そんなことをしたら、俺の学院生活終わるからな!?」
「うふふ。バレなければ大丈夫です」
「ぎゃあッ!?」

 エメロードは蔦を駆使して、ディオスを強引にベッドまで運ぶ。そしてすかさず、ディオスの体を押し倒した。
 起き上がろうにも、既にディオスの手首は蔦でベッドに固定されてしまっていた。
 対応が慣れている。強い。
 エメロードはディオスの上で、制服のブラウスのボタンを外していく。
 白い鎖骨と柔らかそうなお腹が露わになったところで、エメロードはさらにディオスの上に覆い被さってきた。

「ご主人様。最近共鳴術の方がご無沙汰でしたので、私少し辛かったです……」

 ディオスの体をさわさわと撫でながら、首筋に熱い吐息を吹きかけるエメロード。
 彼女の柔らかさを全身で受け止めていたディオスの内なる何かが、ゴリゴリと削られていく。

「……ディー君。何やってんの?」

 突然保健室内に響いたのは、聞き覚えのある静かな声音。
 いや、ディオスのことを『ディー君』と呼ぶ人間は一人しかいないわけで。
 ギギギと首を回すと、やはりファルルが入り口に立っていた。両手いっぱいに何かの資料を抱えているので、おそらく手伝いの一環なのだろう。最悪なタイミングで遭遇してしまった。

「あらあら。これからが良いところでしたのに。邪魔が入ってしまいました」

 がっかりしながらディオスから下りるエメロード。
 エメロードの淫らな格好を見たファルルのこめかみが、ピクピクと動いている。

「いや、ファルル……違うんだ……。これには深いワケがあって……」
「誰もいない保健室で服を半分脱いだ状態の『深いワケ』ねえ?」

 しばし見つめ合う二人。いたたまれなくなったディオスの額から、冷や汗が流れ出す。

「ご主人様。ここは一度退散しましょうか」
「だな……」

 ここで、ファルル以外の人間までやって来たらたまらない。
 ディオスの心はエメロードと一つになった。誠に遺憾であるが。

「えいっ!」

 気合いの声と同時に、エメロードの背から数本の蔦が伸び、たちまちファルルの体に絡み付く。
「わああっ!? エメロードちゃん! ちょっとそこは、あっ……やめっ……! ひゃぁん!?」

 エメロードの蔦は、ファルルの全身を容赦なく攻め続ける。息つく暇も与えないエメロードの蔦攻撃により、ついにファルルは膝をガックリと付いてしまった。

「すまんファルル……!」

 ディオスたちはくったりとするファルルを置いて、保健室から猛ダッシュで逃げ出すのだった。
 その翌日、ファルルにこってりとしぼられてしまったのは言うまでもない。










これ、なんで没になったんだっけ……(たくさんあるので記憶が曖昧に)
確か「最後のファルルのくだりがちょっと長い」だったっけ……。
というか別によくない? 本編では見られないような場面を見られるのがおまけの醍醐味なんじゃないの?
本編で活躍が薄かったキャラをここでちょっとでも補完したかったんだけどあかんの?
そもそも本編じゃないのに毎度えっちぃ要素入れないといけないのはなんでやねん。
……ということを思ったりしたんだけど、今さら言っても遅いしなぁ。
次も機会があれば主張してみよう。

いかん、ちょっと愚痴っぽくなってしまった。
まぁ、担当さんどうせここ見てないだろうしええやろ(ノ)´∀`(ヾ)

2018.12.09 
前回同様、3巻の没SSです。
まさか学園ものを書くことになるとは思ってなかったので、全然勝手がわからんかったのです……。












『放課後、東校舎の裏で待っています。』

 そう一行だけ書かれた手紙が、ディオスのロッカーの中に入っていた。

「これ、何だろう……」

 手紙を見ながら困惑するディオス。
 神獣たちは興味津々にディオスを囲み、その手紙をのぞき込む。

「うーん……。ディオスに文句を言いたい生徒がいるんじゃない? やっぱりペディエみたいに、ディオスのことを良く思っていない生徒もいるだろうし」
「わざわざ人目につかない校舎の裏に呼び出して? うわ、それ怖すぎなんだけど……」
「ご主人様もレイナさんも鈍いですね。これは愛の告白イベントというやつです」
「うんうん、ルヴィもそう思うよー」
『なっ――!? 告白!?』

 エメロードとルヴィの言葉に、ディオスとレイナは同時に声を上げて顔を赤く染める。


「そうです。むしろそれ以外に何かあるとは思えないのですが」
「ていうか、もうその放課後じゃん。急いで行った方がいいよディオっち」
「え? いや、でも――」
「例えその気がなくても、すっぽかすよりは誠実にお答えする方が良いと思うのです。きっとその生徒さんにとっても、甘酸っぱい青春の一ページとなることでしょう」
「俺が断ることは前提なんだ……」
「……もしかして……了承して……付き合う気なの……?」
「いや、それはないけど……。そうだな。こんな手紙を用意してくれたほどだし、それにはちゃんと応えないとな……」

 誰かはわからないが、その気持ちは素直に嬉しい。
 ディオスは手紙を握りしめ、指定された校舎の裏へと向かうのだった。



 指定された場所に着いたが、まだ誰もいない。
 ひとまず神獣たちはディオスから離れ、側の茂みに姿を隠した。

「ちょっと緊張するな……」

 思えば、誰かから告白なんてされたことがない。ディオスの心臓は否が応にも速度を上げて打ち始める。
 そして待ち始めて数分経った頃――。

「ちょっと!? 何であんたがここにいるのよ!?」

 金切り声に振り返ると、そこにはペディエがいた。

「いや何でって、手紙で呼び出されたから来たんだけど……。もしかして告白しようとしたの、ペディエだったのか?」
「なっ!? だ、誰があんたに告白なんかするのよ!? 私だって手紙で呼び出されたからここに来たのよ! コーシカ先輩に!」
「コーシカに?」
「そうよ! だってこの手紙を貰ったんだもん!」

 そう言うとペディエはポケットから手紙を出し、ディオスの鼻先まで近付けて見せつけてくる。

『放課後、東校舎の裏で待っています。コーシカ』

 確かに手紙にはそう書いてある。だが、その手紙を見た瞬間ディオスは眉根を寄せた。

「誰から貰ったんだ?」
「クラスメイトの子よ」

 ディオスは無言のまま、自分のロッカーに入っていた手紙をペディエに見せる。
 ペディエは最初こそ怪訝な顔をしていたが、その手紙を見るや否や目を見開いた。

「え……? 筆跡が同じだ……」
「どうやらこれは……嵌められたようですわね、ペディエ」

 ペディエの肩に乗っていたエンスタは、少し嬉しそうに校舎の陰に視線を送る。
 そこには、数人のクラスメイトがひょっこりと顔を覗かせ、こちらを窺っていた。

「あ、ばれた?」
「ごめんねペディエー。これでちょっとでもディオスさんと仲良くなれるかなーと思って」
「そういうことー! じゃああとはごゆっくりー!」

 クラスメイトたちはキャッキャとしながら走り去っていく。

「んなっ!? 余計なお世話よー!」

 絶叫するペディエだったが、クラスメイトたちはさらにキャッキャと喜ぶだけだった。
 ペディエは悔しそうにフンと鼻を鳴らしてから、ディオスに向けてとある物体をおもいきり投げつけてきた。

「おわっと!?」

 受け止めたディオスの手には、ふかふかした美味しそうな焼きそばパンがあった。

「えっと……これは?」
「購買で売っている、超人気のパンよ! コーシカ先輩が以前よく買っていたって聞いたから、さしあげようと思っていたんだけど。でもあの手紙は偽ものだったみたいだし……。仕方ないからあんたにあげるって言ってんの! ありがたく受け取っておきなさい!」

 そう言い捨ててから、ペディエはツカツカと去っていく。

「……相変わらず……お兄ちゃんに……きつい……」
「ふふっ。でもちょっと可愛いところがあるじゃないですか」

 ペディエの後ろ姿を見送ってから神獣たちが呟く。
 ディオスは手元に残った焼きそばパンを見ながら、小さな笑みを浮かべるのだった。











前回の没同様に、3巻のゲストキャラであるクラスメイトを出したかったんですけど。
なぜか没になりました。
ペディエの典型的なツンデレが書けたので割と気に入ってたのになぁ。

2018.12.04 
今回は3巻の没SSです。
よくよく考えたらおまけの特典SSに没を出されるって意味わかんないですけど、その分買ってくれた方が楽しんでくれてたら本望や……。














 全ての授業を終えた放課後。
 楽しそうにお喋りをしながら、教室を後にするクラスメイトたち。ディオスも勉強道具一式をまとめ、席を立とうとしていた。

「ねーディオっち。今日もまた図書室で勉強するの?」
「あまり根を詰めても体に良くありませんよ。たまには息抜きをしませんか?」
「うーん、そうだなあ……」

 学院の制服に身を包んだ神獣たちに囲まれながら、これからの予定を考えるディオス。
 そんな彼らに、ビクビクしながら近付く生徒が一人。
 極度に人間が苦手な学級委員、サヴラーハだった。

「あ、サヴラーハ。どうしたの?」

 気付いたレイナが声をかけると、他の神獣たちも振り返る。
 しかしサヴラーハはディオスの遙か前で止まると、生まれたばかりの子鹿のようにプルプルと体を震わせるばかりだった。

「あのね。今日はディオスさんが掃除当番だよって言いにきたの。ね?」

 サヴラーハの肩に乗っていたザバルガが、苦笑しながら彼女の代わりに説明をする。サヴラーハはコクンと頷くと、顔を真っ赤にしながら深く俯いてしまった。

「掃除当番?」
「……そういえば……放課後になると……誰かがやっていたような……」

 マリンの言葉に、ディオスも昨日までの放課後の光景を思い出す。
 確かに、箒を持ったクラスメイトの姿を目にしたことがある。すぐに教室を後にしていたので、見かけたのは数回だけだが。

「うん。毎日二人ずつ、順番で掃除当番を回しているの。今日はサヴラーハも当番の日だから、ディオスさんに教えてあげるって」

 サヴラーハは俯いたまま、教室の隅の方を指さした。
 彼女の指の先にあったのは、縦長の掃除用具入れ。ディオスは今まで意識していなかったので、その存在を認識していなかった。

「まぁ、教えると言ってもやることは単純よ。箒で床を掃いて、後は窓を拭いて終わりね」
「わかった。なら早速やろうか」

 掃除なら村にいた時に毎日やっていた。どちらかと言えば得意な方だ。

「ご主人様、私たちもお手伝いいたします」

 早速ディオスと神獣たちは、掃除用具入れから箒や雑巾を取り出す。
 ザバルガもサヴラーハの肩から下りて、人間形態になっていた。

「マリン、水をお願いね」
「……まかせて……」
「うふふっ。マリンさんがいるのでラクできそうですね」

 レイナとマリン、エメロードは窓拭き。残るルヴィ、ディオス、そしてサヴラーハとザバルガは掃き掃除という役割に分かれた。

「よし、パパッと終わらせましょう。サヴラーハも早く図書室に行きたいだろうし」

 ザバルガのひと声で、皆は一斉に動き出した。
 マリンが窓にそっと水を放ち、レイナとエメロードが丁寧に拭いていく。
 ディオスとルヴィは教室の端から箒で床を掃き、サヴラーハとザバルガは彼らと逆の方向から進み、作業効率を上げる作戦だ。

「しっかし、こうやって見ると教室って結構広いんだねー」

 箒を動かしながら、不意にルヴィが呟く。
 彼女の言葉につられ、ディオスは改めて教室の中を見回した。
 自分たち以外誰もいない、がらんとした教室の中。
 人がいないだけで、授業を受けていた時とは別の空間のように広く見える。
 しかし、どうやら目の錯覚ではないようだ。
 教室の端から端まで掃く――という単純な作業だが、なかなかに大変であった。

「ディオスさんたち、大丈夫ですか?」
「ああ……って、ザバルガたちはもうそこまで進んでいるのか。早いな」

 さすがに慣れているのか、サヴラーハとザバルガは既にディオスたちの倍ほど進んでいた。

「ふふっ。じゃあ今日は特別ね。ここは私に任せて」

 ザバルガが指を鳴らすと、彼女の前に極小サイズの竜巻が出現した。
 小さな竜巻は教室の中を移動し、まだ手に付けていない場所のゴミを吸い込みながら進んでいく。

「おおー!? ザバるんすごいじゃん」
「風の力を掃除に使えるのか。便利だな……」

 感嘆の声を上げるルヴィとディオスのそばを横切り、竜巻はさらに進んでいく。
 が、竜巻が窓際に移動したその時、事件は起きた。
 竜巻の風が、窓拭きをしていた三人の神獣たちのスカートの裾を、ふわりと舞い上げたのだ。

「――――!」

 ディオスの目に飛び込んで来たのは、神獣たちの形の良いお尻と、それを保護する三角形の布――。

「おー。これは絶景かな」

 変に感心するルヴィとは対照的に、慌てて制服のスカートを押さえる神獣たち。


「にゃあああッ!?」
「…………っ!?」
「あらあら。イタズラな風さんです」

 顔を真っ赤にしたレイナが、キッとディオスを睨んでくる。

「ディオス、見たわね!?」

 見てない、とは言えなかった。むしろバッチリ見てしまった。

「あっ、あの、すみません! 今のは私のせいです!」

 ザバルガが慌てて頭を下げたので、ひとまずそれ以上追求されることはなかった。
 しかしディオスの脳裏には、日の光に照らされた神獣たちの眩しい下着がしっかりと焼き付いてしまっていて――。
 しばらくの間、ディオスは一人で悶絶するのだった。












主人公が直接絡んでない、という理由で没になったやつ。
「何でや。ええ思いしてるやんけ」と個人的には納得いかなかったんですが、こうしてブログのネタにはできたのでまぁ結果オーライかな……。

2018.11.30 
誰も見ていないかもしれないけど、粛々と上げていく没SS第二弾。
(カウンターを付けてないのでマジで人が来ているのかわからん)
今回は2巻の没SSです。
横書きで読みやすいように行を空けてるよ。













 ディオスと神獣たちは、現在バハル・シエロの端にある公園にやって来ていた。
 柔らかな芝生が生い茂り、大きな木も点在していて、それなりの広さがある公園だ。
 しかし多くの人で賑わっている浜辺とは違い、公園内は閑散としている。

「おー。人っ子一人いないね」
「やはり皆さん、海で遊んでいらっしゃるのでしょうねえ」

 神獣形態でディオスの体に乗ったまま、神獣たちは公園内をキョロキョロと見渡した。

「でも、これくらい静かな方が俺は落ち着くよ」

 そう言うとディオスは、すっかり日の光で色あせたベンチに腰を下ろした。
 気分転換に散歩に繰り出したものの、当然のようにホテル内はどこも人が多く――。
 半ばげっそりとしながら街の外れまでやって来たら、この公園を見つけたというわけだ。

「にゃー」
「……ん?」

 不意に聞こえてきた、細くて可愛らしい声。
 皆は一斉にレイナへ振り返った。

「わ、私じゃないわよ!?」
「でも今の声、絶対猫だったよねー、的な?」
「だから私は猫じゃないってば!? ……それよりもこの声、私たちを呼んでいるみたいよ」
「猫の言葉がわかるなんて、やっぱりレイナは――なんでもない」

 ディオスが言葉を途切れさせたのは、レイナが凄い形相で睨んできたからだ。
 レイナはディオスの肩から飛び下りると、人間形態へと変身する。そして他の神獣たちも、彼女に続いて人間形態になった。
 その間も「にゃー」という声は、絶えることなく続いていた。
 しばらくの間、皆は周囲にくまなく視線を這わせていたが――。

「お兄ちゃん……いた……。あそこ……」

 マリンが指さしたのは、近くに生えた木の上だった。
 見上げた先には、白い猫がいた。
 枝の先から、青い目でディオスたちを見下ろしながら鳴いている。

「ふむふむ……」
「レイにゃん、何て?」
「あの子、カラスにいじめられている内に、この木に登っちゃったみたい。カラスは飽きてもうどこかに行ったらしいけど、高いから下りられなくなったって。で、私たちに助けを求めていたと」
「あらあら。それでしたら私が下ろしてさしあげます」

 言うや否や、エメロードは背から蔦を出す。そして猫に向けてシュルシュルと蔦を伸ばした。
 エメロードの蔦は白い猫の体に絡み付き、そしてすぐに彼女の体へと巻き戻った。

「……良かった……」

 皆が安堵する中、エメロードは白い猫を解放する。
 その瞬間、白い猫はレイナの体に飛びついたのだった。

「うにゃっ!?」

 白い猫はレイナの頬に、強く顔をすり寄せる。

「レイナに声を聞いてもらえたことが、よっぽど嬉しかったんだろうな」
「あらあら、助けたのは私ですのに。ちょっと嫉妬しちゃいます」
「まぁまぁエメ姉」
「でもレイナ……。そうやって白い猫を抱いていると……その子……レイナの子供みたいに見える……」
「なっ、何を言ってんのよマリン!?」
「あー、確かに。レイにゃんも白いもんねぇ」
「だから私は猫じゃないって――にゃああッ!?」

 レイナが突然大声を上げたのは、白い猫がレイナの首筋をペロペロと舐め始めたからだ。

「あっ、あの、嬉しいのはもうわかったから、その、ちょっとやめ――ひゃぁん!」

 無人の公園に響き渡るレイナの艶っぽい声。
 それでも猫を払いのけるわけにもいかず、レイナは白い猫にされるがままになっていた。

「……微笑ましい光景から……一転したような……」

 マリンが冷静に呟いた時、今度は白い猫はレイナの胸元に顔をスリスリとし始めた。

「や、そこはダメっ。わ、私はお母さんじゃないっ! くすぐったいってば!」

 どういう顔でこの光景を見れば良いのかわからず、ディオスは首筋を掻きながら困惑している。
 その隣で、エメロードは蔦で自分の体を縛り始めてしまった。

「これは……。今、私の中で新しい扉が開いたのがわかりました。動物責めがこんなに興奮するものだなんて……うふふ……ふふ……ふふっ……」
「エメ姉のレベルがどんどん上がっていく……」

 ルヴィは額から脂汗を垂らしながら、若干彼女から距離を取るのだった。
 ようやく白い猫がレイナから離れると、彼女は力が抜けたようにペタンと地面に座り込んでしまった。
 顔を赤くしながら乱れた呼吸を繰り返す姿は、知らない人が見たら猫とじゃれ合っていたとは全く思わないだろう。
 白い猫はレイナの周りを一周すると「にゃー」とひと声鳴く。

「……うん。今度はカラスにいじめられないに気をつけなさいよ」

 もう一度「にゃー」と鳴いてから、白い猫はあっという間に公園の端の方まで行き、姿を消した。

「行ってしまったな」
「……迷子に……ならないかな……」
「あの子、この近辺で暮らしている野良猫みたいだから、そこは大丈夫なんじゃない?」
「そんなことまでわかるなんて、さすがレイにゃんだねー」
「…………猫じゃない」

 曇り空の如く、どんよりとした目で抗議するレイナ。さすがに疲れたらしい。

「うふふ……。今のでご主人様を攻める新しい方法を思い付きました。次はレイナさんに神獣形態のままでいてもらって……うふふ……」
「え、ええと……。もう少し公園内を散策してみようか」

 じゅるりと涎を啜るエメロードにそこはかとなく危機感を覚えたディオスは、強引に話題を切り上げるのだった。












ディオスが神獣たちと触れ合ってないと言われたので没。
確かにほのぼのしてますが個人的にはこういう系のが好きなんだ……。
5巻にこのSSの要素をちょっとだけ散りばめてます。

2018.11.26